大判例

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横浜地方裁判所 昭和25年(ヨ)131号 判決

申請人 岡村克己 外八名

被申請人 株式会社昌運工作所

一、保証 無保証

二、主  文

申請人らが、被申請会社の従業員である地位を仮に定める。

被申請人は、申請人らに対しそれぞれ、昭和二十五年五月一日から本案判決確定まで、毎月二十五日に、別紙目録記載の賃金から税法所定の税金を控除した額を支払え。

申請費用は、被申請人の負担とする。

三、理  由

当事者双方提出の疎明方法を綜合して、当裁判所が、一応認定した事実は次の通りである。

「被申請人は、工作機械の製造販売を営業とする会社であり、鎌倉(大船工場)と大阪に工場をもつている。申請人らは大船工場の従業員であり、それぞれ別紙目録記載の給与(昭和二十五年一月分から三月分までの平均月額)をうけている。

大船工場の従業員中、工場長、工場次長と課長四名を除いた残りの百六十四名は、全日本金属労働組合神奈川支部昌運大船分会という労働組合を組織しており、申請人らは、昭和二十四年十一月の組合大会において選出された執行委員十名中の九名である。

昭和二十四年一月五日制定された被申請会社大船工場の就業規則においては、日曜日、年末年始(十二月三十日から一月三日まで)創立記念日(二月十一日)天皇誕生日(四月二十九日)文化の日(十一月三日)労働祭(五月一日)が休暇と定められているが、その他の「国民の祝日」は休日と規定されていない。

そこで昭和二十四年十一月二十三日の勤労感謝の日に際して、同日を休日とするよう組合から要求したが、会社は応じなかつた。又、昭和二十五年二月八日従来の労働協約が失効したので、組合は、「国民の祝日」を全面的に休日とする協約案を会社側に提出したが、まだ協約は成立してない。

昭和二十五年三月二十日、組合員から翌二十一日春分の日を休日とするようにしてもらいたいとの要求があつたので、組合は、執行委員会を開いた結果会社と接衝することにきまつたので、同日午後三時半頃執行委員である申請人A、B、C、Dの四名が、工場長不在のため工場次長である中村武雄にその旨要求したところ、同人は、工場の現状に鑑み、組合大会においてどんな決議をしようと二十一日を休むことは断じて応じがたい、と拒絶した。そこで、組合は、組合員の声に従つて組合大会を開催した結果、「春分の日は、大阪工場でも、この附近の工場でも休日であるのに、その要求を拒否するのは不当であるから、会社側が応じなければ、第一方法として慰労休暇をとる。それができないときは、当日は実質的なストライキとして休業する。」ことを決議した。

申請人らは、右決議に従つて、更に会社と交渉しようとしたところ、工場長、課長が見当らないので、午後六時二十分頃、「三月二十一日を公休日とされたい。」との要求書と、「本日の大会の結果、全員一致三月二十一日を公休日とすることに決定した。」旨の通告書(いずれも組合名義、工場長宛)を守衛に託して帰宅した。右二通の書面を、会社側が現実に受領したのは、三月二十一日午前七時五十分である。

三月二十一日は、執行委員らが会社と交渉のため出社したのみで、一般従業員は、大会の決議通り出勤しなかつた。

会社は、申請人らの右行為は、一般従業員をして、会社の規律に服し会社の指示に従つて作業するという被傭者としての責務を誤らしめたものであるとし、前示就業規則第六十六条第五号(職務上の指示命令に不当に反抗し、職場の秩序を紊し、又は紊そうとしたもの)に該当する行為があつたとの理由で、昭和二十五年四月十四日、申請人ら九名のみを解雇した。」

右事実によれば、申請人らを含む組合員全員が、昭和二十五年三月二十一日作業しなかつたことを理由に、被申請会社が申請人らを解雇したことは明白であり、右同日作業をしなかつたのは、申請人らの属する前記労働組合と、被申請会社との間に労働条件(休日)に関し、主張の対立があり、組合が、その要求を貫徹するために行つた同盟罷業であると認めることができる。

被申請人は、争議行為とは、労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為であるところ、申請人らを含む労働組合の組合員が三月二十一日出勤しなかつた行為は、他の目的達成のための手段である行為でなくて、春分を休日にするという目的自体を達成した行為であるから、争議行為とはいえないと主張するが、前示認定のように、昭和二十四年勤労感謝の日に際して、組合が会社に対して、同日を休暇としてくれと要求した事実や、昭和二十五年二月、組合が会社に提出した労働協約案には「国民の祝日」を全面的に休日とすると記載されている事実に徴して、組合の要求は、単に春分の日のみでなく、「国民の祝日」を全面的に休日とするところにありと認められ、その目的達成のために、春分の日に同盟罷業したものと解されるから、争議行為でないとの被申請人の主張は、採用できない。

又被申請人は、組合員が春分の日を休日にしてくれと要求したのは、前日の午後であつて、会社と充分交渉したとはいえないし、又組合大会後、会社側と交渉せずに、直に翌日休んだのは、万全の措置をとつたものとはいえないと主張し、交渉が充分つくされなかつたのは、前認定により認められるが、又前記認定によれば、三月二十日午後の交渉において、会社側は、強く組合側の要求を拒絶し、到底その要求がいれられないような状況にあつたといいうるから、組合側が更に交渉を重ねることなく直に争議行為にでたとしても、それをもつて違法な争議と断ずることをえない。

果して、そうならば、被申請人が、昭和二十五年四月十四日、右組合の執行委員十名中の九名をしめる申請人らを解雇した行為は、労働組合に認められた正当な争議行為を理由とするものであつて、労働組合法第七条第一号にいう労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、労働者を解雇したものであり、右解雇は無効であり、申請人らは依然として、被申請会社の従業員であるといわなければならない。

申請人らのような労働者は、通常そのうける給与のみによつて生活を維持するものと認むべきであつて、その給与支払を受けないときは、その生活に重大な脅威をうけることは、まことに明らかであるから、申請人らが被申請会社の従業員であるとの仮の地位を定め、これに賃金支払を命ずる仮処分をする必要があると認める。よつて申請費用は、敗訴の被申請人の負担とし、主文の通り決定する。

(裁判官 山本信政 地京武人 瀬戸正二)

別紙目録<省略>

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